尾山台で小さな本屋さんをはじめます
2021.09.21
尾山台の駅から徒歩2分、商店街沿いにある4坪の小さな物件を借りました。ここで本屋さんをはじめます。
というか、はじまっています。
物件を借りたのは6月1日。以来、月に1-2回のお試しオープンを繰り返しながら、少しずつ少しずつお店の体裁を整えてきました。最初は仕入れもままならず、なんとか集めた40冊から始まり、70冊、100冊と本が増えるたびに、少しずつ本屋さんらしくなってきました。
本屋さんのことを考えはじめたのはいつだったか。具体的なきっかけがあったわけではありません。尾山台にFlussを作って数年。尾山台の地域や学校の取り組みに関わることが増え、尾山台気持ちいいな。とても素敵だな。と思うにつれ、唯一の欠点「新刊を扱う本屋さんがないこと」だけが、浮かび上がるようにじわじわと気になりはじめました。
やがて「本屋さんない問題」は白いTシャツに跳ねたカレーくらい気がかりになり、自分が本屋さんをやるならどんな本屋をやりたいか、どんな営業形態だったら成り立つか。ノートの端っこに妄想を書くようになりました。
「本屋さんがないってそんなに問題?そんなに気になる?」そう思う方も少なくないですかね。
身の回りのお店を想像して欲しいのですが、「買わなくてよくて、目的なく入ってよくて、長居してもよくて、商品を自由に手に取ってよくて、知らないものに出会えちゃう。」そんなお店、本屋さん以外にありますか。こんなにお客さんに「自由」が許されたお店は他にないと思うのです。(コンビニはちょっとそういう要素あるけど)
本屋さんは本を買ってもいいし買わなくてもいい。立ち読みするだけして、さっきまで知らなかった言葉を持ち帰ってもいい。少し大袈裟に言えば、本屋さんのその自由さは、まちに少しの余裕を作ると思うのです。
本を通して知識を得るだけなら図書館でいいし、Amazonでいいし、Youtubeでも良いかもしれません。けれど、生活の中で、フラッと未知のものに出会い、自分が少しだけ更新される。その微々たる思考の新陳代謝がある町と、ない町。だったら僕はそれがある町に住みたい。
実は約1年前にも、同じ物件を借りようとしたことがありました。本屋さんをその時はタイミングが合わず借りれなかったのだけれど、今回はあろうことか、息子が生まれた一ヶ月後に物件があいたことがわかった。正直狼狽したし、なんで今なんだよ!とも思った。とっても心細い状態で、妻に一応相談してみた僕に、彼女が言ってくれたのがさっきの話だ。良き父の前に、良き人であれということだと思った。
これは、株式会社clockhourとしてなんで本屋さんやるの?という話にも通じる。社長の個人的な趣味でお店やんの?と言われたらまぁ、そうです…と言わざる得ないのだけれど、でも経営判断としてはちょっと違う。
弊社の中心事業のデザイン業は、さまざまな企業や行政、個人の方が新しいチャレンジをするときにご相談をいただいて、その実現に必要なものを作って支える仕事だ。その仕事をするにあたって、何よりも大事なのは、チャレンジする人の気持ちがわかることだと思う。正しさや、知識よりもずっとずっと、その人が抱えている不安や、その人にしか見えていない可能性を一緒になって見ること。
その気持ちがわかるためには、こちらも常にチャレンジの当事者でありたい。お金がない。予算がない。その中でも出来る限りのことはしたい。そうなったときに何にどうお金をかけるか。どこで勝負するか。綺麗事じゃない意見を言えるか。本屋をやっている僕と、本屋をやっていない僕だったら、明らかに、本屋をやっている僕の方が良い仕事ができる。となればもう、本屋さん、やるしかないよね。